◆ 回 転 移 相 式 渦 流 探 傷 に 関 す る 説 明
回 転 移 相 式 渦 流 探 傷
渦流試験の原理
回転移相型渦流探傷の特徴
回転移相の原理

回 転 移 相 の 効 果
線材の探傷例(信号振幅巾)
平角線材の探傷例
  (信号振幅巾)
1.渦流試験の原理
図1に示すように、コイル1とコイル2を近接させ、コイル1に交流電源を接続して交流を流すと、電磁誘導によってコイル2には交流の起電力が誘起します。このときコイル2が負荷を通して閉じていると、誘導電流である交流が流れます。又、コイル2に流れる交流は、電磁誘導現象によりコイル1に誘導電流を発生させます。このために、コイル1に流れる交流は、コイル2に誘導電流が流れることによって増加します。従って負荷の変動によってコイル2に流れる交流が増減すると、それに比例してコイル1の交流も増減します。
 交流回路の起電力Eと電流Iとの間には、次式の様な関係があります。
  E=Z・I
このZはインピーダンスと呼ばれるもので、直流回路の抵抗Rに相当するものですから、コイル1に流れる交流が増加することはコイル1のインピーダンスが減少することになります。即ち、コイル2に流れる交流が増加することによって、コイル1のインピーダンスの変化を測定することによってもコイル2に流れる交流の変化、即ち、負荷の状態を知ることが出来ます。
 次に、図2に示すようにコイル2の代わりに金属板をコイル1に接近させると、導体である金属板は1回巻きの平面的なコイルの集まりと同様なものですから、金属板には同心円状の交流の誘導電流が流れます。この誘導電流をうず電流といいます。又、金属板にうず電流の流れに変化を与えるような材質の変化部分や割れ等の欠陥があると、うず電流が変化してコイル1のインピーダンスが増減します。従って、コイル1のインピーダンスの変化を測定することによって、試験品の状態を増減する渦電流の変化を検知することが出来ます。
 渦電流の強さ、及び分布はコイルと被試験材との結合度、被試験材の形状、寸法、電気抵抗、磁気的特性、及び欠陥有無等によって左右されます。
図 1 図 2

2.回転移相型渦流探傷の特徴
図 3 図 4

 図3は一般的に使用されているホイストンブリッジの渦電流式欠陥検出用ブリッジ回路です。
  出力条件  平衡時(出力ゼロ)  L1:R2=L2:R1
          欠陥検出出力時  |L1−L2| になります。
 図4は、図3の検出部(コイル)を示したもので、貫通型の欠陥検出を示します。上記図3及び図4の様に接続することによって欠陥出力が可能です。
 検出される出力は、交流電源(AC)を使用しているため電流変化と位相変化が現れます。又、検出部にコイルを使用しているために変化量はインピーダンスの変化によって、変化した電流変化値と位相変化値となって現れます。

図 5 図 6

 図5は、貫通型検出コイル中に非磁性金属片Cを挿入して時の図であり、検出コイルに一定交流電源を接続して交流を流した時に発生するベクトル図を図6に示します。

検出コイルは、一般にRとL(インダクタンス)との合成で成り立っています。
 図5の金属片Cの良部BをL o中におかれているとき図6のZ1でθ1の位相角度になりあます。又、金属片Cを移動し、L o中に疵部Aをおいた時、図6のZ2でθ2に変化します。
この時、良部と疵部の位相変化量は、
|θ2−θ1|=θ3となり条件(金属材質、寸法、コイルインピーダンスR・ωL、交流周波数)を変えない限りこの値は一定となります。
従って、一般的な渦流探傷方法では、一定条件での欠陥検出の位相角変化は理論上不可能です。
今回、開発した渦流探傷器は、上記一定条件において、疵の位相角度を任意に可変出来る装置です。
(国際特許)
                           (欠陥検出装置のベクトル表示)
図 7

3.回転移相の原理
回転移相型渦流探傷器は、従来の渦流探傷器で使用されているコイルインピーダンスのベクトル変化量(図7左図の位相変化量θ3)での検出のみでなく、検出コイル内での磁束の変化も検出し、制御コイルによりコイル内部の磁束が一定となるように磁束を制御しています。
 検出コイル内に金属材料が挿入されますと、コイル内のガタ信号(ノイズ信号)によりコイルインピーダンスは変化します。
 この時、金属表面に疵が発生していますとコイルインピーダンスのベクトル量と、磁束の変化量も変わり制御コイルからの信号と検出コイルからの信号により欠陥の検出が可能となります。
 この制御コイルからの、制御信号の位相を変化させることで、通常分離が出来にくかった疵信号とガタ信号(ノイズ信号)の位相差を任意に変化(図7右図)させることができます。

回転移相型コイルは、図8の構成となっています。
図 8

 従来の渦流探傷器では、L1とL2の検出回路で構成されており、|L1−L2|のベクトル変化量
  (図7左図のθ3)の情報でしかないので条件を変えない限りこの位相差は一定となり、このままではSN比は向上しません。
図 9
  
 図9のコイル空心時の磁束本数をφa(この値は一定)とします。そのコイルに金属材料を挿入しますと、金属材
料の磁束本数がφbとなり内部空間磁束と金属材料内磁束の関係は、φa−φb:φbとなります。
 この状態で疵部にきますと金属材料の体積が減るため金属材料内の磁束本数が減り金属材料内の磁束本数はφb−刄モとなります。又、この刄モが疵信号とガタ信号の位相差に相当します。
従って、この刄モの値を変化させることで疵信号とガタ信号の位相差を任意に変化させることができます。これが回転移相の原理です。 又、磁束と電流の間には、φ=I/Tの関係から、電流Iを変化させれば磁束が変化します。又、図10のベクトル図において、RとVは同相であり、又、ωLとIが同相であることから電流Iを変化させることで疵信号とガタ信号の位相差θ3が変化します。
図 10

 ◆ 回 転 移 相 の 効 果
線材の探傷例(信号振幅巾)
SUS304、φ10o、深さ50μm
従来方式 回転移相方式

平角線材の探傷例(信号振幅巾)
磁性材、コーナー部クラック疵、深さ20μm、長さ0.2o
従来方式 回転移相方式


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